教材名
対象 | 中学部生徒、高等部生徒 |
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障害種別 | 視覚障害教育 |
単元・活用場面 | 理科 |
ねらい |
・冷やされた空気が下降することを、実験教材の触察(触覚による観察)を通して理解する。 ・温められた空気が上昇し、冷やされた空気が下降することを、温水と冷水を用いた実験教材の触察(触覚による観察)を通して理解する。 |
障害特性に対する配慮点 |
中学校理科「気象とその変化」では、雲の発生や前線の構造について学習する。雲の発生には空気塊の上昇が関係しているが、どのようなときに空気塊が上昇するのか、また、前線の構造の基礎段階として暖気や寒気の性質がどのようなものであるか、体験を通して理解することは重要である。そこで、「手のひらで感じる暖気と寒気実験教材」用いた体験的な学習を通してねらいが達成できるように工夫した。 実験教材は、触察により理解できる大きさとし、両手で触察することによってその仕組みが分かるようにした。 |
期待される効果及び成果 | 触察による体験的な学習を通して、温められた空気が軽くなり上昇することや、冷やされた空気が下降することについて、具体的なイメージをもつことができる。 |
使い方 |
市販の前線モデル実験器(以下、実験器とする。)と、氷(寒気のモデル)を用い、以下の手順で行う。 【冷やされた空気が下降することを確かめる実験】 ① 実験器の中央に、仕切り板を差し込む。図のような排水溝ネットに小さな氷をいっぱいに入れ、片側の空間に置く。(排水溝ネットに入れると、③で仕切り板を取り外しても氷が隣の空間に崩れ落ちない。)氷による冷気は、寒気のモデルである。 ② 図のように、氷を入れていない方の空間に、指先が底につくように片手の手のひらを差し込む。このとき、手のひらは実験器の内壁に触れないようにする。(内壁に触れていると、その感触が手のひらに伝わり、③以降で温度の変化が分かりづらくなる。)こちらの空間の空気は、暖気のモデルである。 ③ 中央の仕切り板を取り外すと、指先で冷気(寒気のモデル)を感じることができる。しばらくすると、指先から指の付け根に向かって、冷気が上がってくることが分かる。 ④ 手のひらを5㎝程度、静かに持ち上げ、数秒間静止した後に、再び底に向かって静かに下ろす。持ち上げた時には冷気(寒気のモデル)を感じることはできないが、下ろした時には差し込んだ手のひらの下半分(指先)で冷気を感じることができる。 ⑤ ③、④の体験から、冷気(寒気のモデル)が隣の空間の空気(暖気のモデル)と接すると、冷気は下方へ、空気は上方へそれぞれ移動することを、手のひらで感じる温度で理解することができる。 【温水と冷水を用いて温められた空気が上昇し、冷やされた空気が下降することを確かめる実験】 ① 実験器の中央に仕切り板を差し込む。仕切り板で区切った片側の空間に温水(暖気のモデル)を、もう一方の空間に冷水(寒気のモデル)を入れる。なお、温水として40℃弱の湯を使ったが、生徒に確認しながら適切な温度を設定する。冷水は水道水をそのまま使う。 ② 温水(暖気のモデル)を入れた空間に片手を、冷水(寒気のモデル)を入れた空間にもう一方の手を入れるよう、生徒に指示する。このとき、指先が実験器の底に着くまで入れるようにする。 ③ 中央の仕切り板を取り外す。 ④ 温水(暖気のモデル)側に入れた手は、指先が冷たく感じられる。また、冷水(寒気のモデル)側に入れた手は、手の付け根が温かく感じられる。生徒はこの変化に驚いて、思わず状況を説明しそうになるが、未体験の他の生徒に分からないように、ここではまだ話さないように指示する。(生徒が一人の場合には、もちろん、詳しく状況を説明してもらうとよい。) ⑤ 短時間後に、温水(暖気のモデル)側に入れた手は、指先から指の付け根に向かって徐々に冷水(寒気のモデル)が上がってくることが分かる。また、冷水側に入れた手は、手の付け根から指の付け根に向かって徐々に温水が下がってくることが分かる。 ⑥ 手のひらを、水がかき混ざらないように静かに5㎝程度持ち上げ、数秒間静止した後に、再び実験器の底に向かって静かに下ろす。持ち上げた時には、指先で温水(暖気のモデル)の温かさを感じるが、下ろした時には指先で冷水(寒気のモデル)の冷たさを感じられる。 ⑦ ②~⑥の体験から、温水(暖気のモデル)が冷水(寒気のモデル)と接すると、冷水は下方へ、温水は上方へそれぞれ移動することを、手のひらで感じる温度で理解することができる。 |
関連する教材や情報 |
株式会社ナリカ ミルソーⅡ(前線モデル実験器) カタログNo:C15-7160 8,500円(税抜) https://www.rika.com/product/detailed/C15-7160 排水溝ネットはスーパーマーケット等の量販店で購入することができる。 日本視覚障害理科教育研究会 https://www.jaseb.net/ 柴田直人, 手のひらで感じる暖気と寒気, JASEBミニレター1報, 2020. 柴田直人, 手のひらで感じる暖気と寒気 その2, JASEBミニレター2報, 2022. |
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