教材名
対象 | 中学部生徒、高等部生徒 |
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障害種別 | 視覚障害教育 |
単元・活用場面 | 理科 |
ねらい |
・モデル教材を触察(触覚による観察)し、天体同士の大きさの比較から各天体の大きさの違いについて理解する。 ・100億分の1の縮尺の太陽と各天体間の距離を実際に歩いて体感し、太陽系の空間的な広がりを理解すると共に、その空間的な広がりにおける各天体の大きさ(小ささ)について理解する。 |
障害特性に対する配慮点 |
盲学校の理科の指導においても観察は重要であるが、観察対象が非常に大きなものや非常に小さいものは観察が困難であり、観察方法の工夫が必要となる。そこで、「100億分の1太陽系惑星モデル触察教材」を用いた体験的な学習を通してねらいが達成できるように工夫した。 モデル教材は、生徒一人一人に1セットずつ準備した。また、モデル教材は触察により理解できる大きさとし、できるだけ正確な縮尺で天体同士の大きさを比較したり、太陽系の空間的な広がりを実感したりできるようにした。 モデル教材に使用した材料は大変小さな球であるため、それぞれの球を手のひらに載せても分かりにくく、また、紛失しやすいため、4cm×6cm程度の薄いアクリル板に接着剤で貼り付け、触察しやすくした。この板は片手で持てる大きさであり、板を把持しながらもう一方の手でじっくりと球を触察することができる。また、各天体を貼り付けたアクリル板を並べるための木枠を製作し、触察時に教材を把握しやすいよう工夫した。板には点字・墨字で惑星名を表示し、全盲の生徒も弱視の生徒も使用できるようにした。 なお、本教材は、筆者がスタッフとして参加した旧 宇宙開発事業団(現 宇宙航空研究開発機構)の社会教育活動(宇宙教育プログラム)の教材を視覚障害理科教育向けにアレンジしたものである。 |
期待される効果及び成果 |
視覚の活用が困難である全盲の生徒は、太陽系の各天体の大きさや太陽系の空間的な広がりのイメージをつかみにくい。また、弱視の生徒も、教科書等に示されている図からだけでは、正しいイメージの形成は難しい。(教科書等に示されている太陽系の概観図は、紙面の都合上かなり縮尺を小さくして掲載されており、その中に描かれている各惑星は、その縮尺に対して正確な大きさ(直径)で描かれていないため。) 本教材を活用することで、太陽系の各天体の大きさと、太陽系の空間的な広がりのイメージもつことができるようになる。 |
使い方 |
本教材を用いた授業は、理科室で学習を行った後に、校外で学習を行う。 【理科室での学習】 太陽系の各天体のモデル教材と、モデル教材並べるための木枠を生徒に1セットずつ配布する。まず、直径の大きなものから小さなものになるように、順に並べるように指示する。そして、直径の大きな木星型惑星と直径の小さな地球型惑星に分けられることや、それらの特徴を説明する。次に、太陽から近い順に並べるように指示し、木星型惑星や地球型惑星と太陽との距離について理解する。そして、太陽のモデル教材を提示し、各天体と比べて直径が非常に大きいことを理解する。 【校外での学習】 まず、学校の正門に太陽のモデル教材を設置し、触察により大きさを確かめる。次に、太陽が太陽系の中心(起点)であることを確認し、太陽を出発して、太陽系の半径の100億分の1である約450mを実際に歩きながら、各天体間の距離を体感する。時々、太陽を振り返り、太陽の位置で声を出してもらうなどして、太陽の方向や起点からの距離を確かめる。また、各天体の位置ではモデル教材を触って惑星の大きさを確かめたり、天体同士の大きさを比較したりする。なお、このモデル教材の世界において光の速度で歩くと1mを約33秒で進む計算となり、最速である光の速度であっても天体間の距離がいかに離れているかを実感できる。 |
関連する教材や情報 |
モデル教材の直径は小さいが、触って分かりやすいビーズやボールペン先の球を材料として利用した。色や模様の付いたビーズは手芸店等で購入することができる。ボールペン先の球は、使用済みのボールペンの先から球を取り出して利用した。太陽のモデル教材は、発泡スチロール球である。 アクリル板や、アクリル板を並べるための木枠の材料の木材はホームセンター等で購入することができる。 日本視覚障害理科教育研究会 https://www.jaseb.net/ 柴田直人, 「100億分の1太陽系惑星モデル教材」を用いた理科の授業の実践, 日本視覚障害理科教育研究会会報(JASEB NEWS LETTER), No. 29, 2010, pp. 38-42. |
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